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反撃

前回の少し直して頂きました。再掲載と付け足しております。


守助くんがその後一路くんとどうなったか、僕は正直詳しく分かりません。ただ一部の五年生の間でも反守助勢力みたいな動きが強まっていると風の噂で耳にしました。とは言え、あの有名な悪ガキの守助くんが簡単にやられる訳がないと僕は思っていましたし、何かのタイミングでまた守助くんが信頼を取り戻した瞬間、今度こそ一路くんたちは大勢の前でボコボコにされるのではないかと僕は思っていました。
芳彦くんは守助くんがいない時は、何にしても彼の悪口を言いたくて堪らないようでしたし、身体測定のあの事件のことは何度話しても飽き足らないようでした。逆に僕は守助くんが家にいない時も彼の存在に怯えていた為、芳彦くんのそんな会話にも常に神経を尖らせていたかと思います。
それは例の事件から数週間後の出来事だったかと思います。
榊原さんたち父の酒飲み仲間は、六時過ぎに家に集まると皆で我が家に集まります。僕の家は貧乏の割に広かったので居心地がよかったかもしれません。
「アホ信二。何度同じ間違いすんだよ」
富田くんはノートを丸めて僕の頭をポカリと叩きます。僕は芳彦くんと一緒にちゃぶ台に教科書を広げて、富田くんに宿題を教えてもらっていました。
富田くんは僕と芳彦くんが間違えるたびにノートで頭を楽しそうに叩きます。父はいつものように仲間内と演歌中。こちらとしては迷惑極まりないですが、大人は子供のことなんて気にしないのです。暫くすると榊原さんが焼酎の瓶を抱えて持ってきておじさん仲間を沸かせました。
榊原さんは僕たちにスナック菓子を持ってきてくれて、それを机の上に広げました。
「宿題がんばっとんな。たまには休憩せなあかんぞ」
僕と芳彦くんは飛び跳ねて喜びます。
「まだ終わってからだろ〜」と富田くんもため息を着きますが、一緒に広げたスナック菓子を貪り始めます。
「ほんでなんだ。ピギーちゃんはどうした」
榊原さんは守助くんにあだ名を付ける名人です。最近ハマってるピギーちゃんと言うのは『豚の子供』と言う意味らしく何気に僕と芳彦くんのお気に入りのワードです。
「相変わらずギンさんは守助くん好きやなぁ」
他のおじさんたちが笑いながらそう言って、庭の横にある納屋を指差します。守助くんが悪さをすると大抵そこに閉じ込められるので、最近では守助小屋。守助くんが居ない時は、子供同士の間で密かに豚小屋と揶揄されていたりします。
「なんだ?また悪さしたんかい?」
「悪さしねぇ日なんてねーけどな」
「そういや今日なんだっけなあ」
「モリちゃんのこったから、道端で野糞でもしたんじゃねーのか?」
「坂上さんとこに爆竹でも投げ込んだんじゃないか?」
「そりゃいい!あのクソ頑固親父のズラを吹き飛ばしてくれんなら、俺は息子に一票入れるぜ!ほら、飯食わしてやれよ母ちゃん!」
父親がカッカッカッと顔を赤くしながら唾を飛ばして下品に笑います。
「あんた、それやめとくれよ。坂上さんただでさえこう言う噂に敏感なんだから。あんたまでそう言うこと言ったらアタシ外歩けないんだからね」
母親はぷりぷり怒りながら、水道を止めてエプロンで手を拭って、榊原さんにおつまみを出します。
「今日お昼帰ってきて久しぶりに寝ようとしたらアレ。仕事ばっかり増やすんだから」
母はベランダに干してある布団に目を向けました。この時間は通常は布団は干されてはないけれど、守助くんが変な時間におねしょをしたせいでまだ乾いていません。その黄色の地図を目にして父親たちは「そうだ、あれだあれ」と同時に首を縦に振ります。
「なんだ?モリモリちゃんはまだ寝小便垂れ治っとらんのか?」
「へ?ギンさん知らんかったか?三日に一回はやらかしてるらしいぞ」
「今日は朝とお昼だから二回だよ」
芳彦くんがすました顔で言ったのでおじさんたちはどっと笑い声をあげました。
「守助くんやっぱオムツ必要なんじゃないか?」
「だなぁ。しかしなんだあのケツのサイズはあるのかいな」
「こらやめたれ、モリモリちゃんに聞こえたらどうすんだよ」
しかしながら酔っ払い集団のそんな楽しそうな会話は、やっぱり納屋の中の守助くんにまる聞こえだったらしく、母が守助小屋の扉を開けた時には守助くんはシャツとブリーフ姿のまま顔を真っ赤にして大人の集団に突進していました。
「こ、こら!!」
「お、俺じゃねえぞ。モリくん。こら噛み付くなって!! 重い重い」
「守助ッ!!!!!」
母の怒鳴り声が響き、守助くんはすぐにその場から引き離されます。そしてまたしても小屋に入れられそうになっているところを榊原さんがなんとか母にお願いし、守助くんはやっと夕食にありつけておりました。
「ほらほら、食え食え」
榊原さんは守助が美味しそうに大盛りご飯を食べているところを幸せそうに眺め、その横で僕と芳彦くんは彼の汚い食べ方を軽蔑しながら見ていました。守助くんは榊原さんが机の上で広げていたスナック菓子をお米と一緒に口に放り込み、お茶と一緒に飲み込んで蛙みたいにゲップします。守助くんが来る前にどうして全部食べておかなかったんだろうと僕は後悔していました。芳彦くんも同じ気持ちだったと思います。僕らの家庭では一日お菓子一つと決められていましたし、買ったお菓子を守助くんに取り上げられるなんて事は日常茶飯事でした。僕と芳彦くんにとっては小さなお菓子でも貴重なものだったのです。
「ブヒブヒ喰い散らかしやがってきたねぇな」
そんな僕らの気持ち汲み取ってくれたのか、富田くんが守助くんに向かってそう言ってくれました。
守助くんは少し富田くんを睨んでいましたが、気にせずに箸を進めます。富田くんには敵わないのを知っているからでしょう。しかし富田くんはそんな守助くんが面白くないのか、今度は芳彦くんに肩を寄せてこう切り出しました。
「なあなあ芳彦。宿題はいいからさぁ。最近学校であった面白いこと教えてくれよぉ」
「面白いこと?? うーん」
「何かあるだろ〜?! 例えばさぁ。どっかの誰かが体育館で漏らしちゃったとかさぁ」
守助くんは箸を握りしめ、鋭い目つきで富田くんを睨みます。
「ん?なんだモリブタ。飯が上手いならフゴフゴ食ってろよ??」
富田くんは更に守助くんを挑発します。守助くんを怒らせてまた納屋に押し込める算段なののでしょう。
「てめぇ…」
「そんなことより教えろよ。なぁなぁ?? 信二も見てねーか?? 聞いたところによると、そいつ大勢の前で年下に電気あんまされてちびっちゃってんの。 し・か・も その後、保健室連れてかれて女子の前でケツとチンコ拭かれてんだぜw お?? なんだぁモリブタ?? さっきから震えてるけどまたなんか漏れちゃいそうなのか〜??」
ただでさえ例の事件の噂は大きくなって、最近の守助くんは荒れていました。なんせ道端でストリーキングをさせられてからのクラスでのパンツの貼り付け、体育の授業中のお尻丸出し事件に加えて今度は年下の前での公開お漏らしです。
普通のメンタルの持ち主ならまず学校に来れなくなる内容に間違いありませんし、下手すれば恥ずかしくて外出さえ出来なくなるでしょう。田舎でも特に子供が多いこの地域では子供同士の間でも噂は広まりやすいので、どこに言っても後ろ指を指されて馬鹿にされかねません。あまつさえ小学六年生と言う最年長の立場でのこの失態は、何かと敏感な僕らの年頃の子にとってはほぼ学園生活的に死を与えられたも同然なのです。これは言い過ぎでもないと思っています。基本的には守助くんは嫌いな僕も、どうしてかこういう守助くんの自由奔放な性格の強さがちょっぴり羨ましく思えていたりもしたんです。

保健室の事は、実は僕も小鉄くんから聞いていた内容ではありました。実際どこまでが本当か分からないですが、女子も大変大騒ぎだったとか。そりゃあ普段からガキ大将を気取っているデブっちょの守助くんが、下半身を濡らした状態で保健室に登場し、保健の先生に下半身を掃除させられていたら、女子だって平常心で居られるわけがないでしょう。
「うっそお!! 三浦のババーにちんこ拭かれてんのこいつ?!」
目の前の思わず芳彦くんはそう言って立ち上がってしまい、慌てて口を抑えます。
「芳彦くん!!」
僕は口に人差し指を当てますが、間に合わなかったようです。
反射的に守助くんは重い腰を持ち上げると、ちゃぶ台を踏んづけて芳彦くんに飛び掛かって馬乗りになりました。茶碗と皿が同時に床に引っ繰り返って母が悲鳴に似た怒鳴り声を上げました。守助くんは顔を真っ赤にして興奮してしまっていて、もう止まりません。例の事件の屈辱、富田くんへの怒りがいっぺんに芳彦くんに向いてしまっているようでした。
芳彦くんは顔を両手で覆っていましたが、それでも守助くんはグーパンチを何度も芳彦くんの顔面に繰り出します。
「ヲイ!! やめろって…芳彦は関係ねぇだろうが!!」
富田くんも止めようとしますが、守助くんはこうなったらなかなか止まらないのです。
「おめぇら、喧嘩なら外でやらんか!!」
父が唾を飛ばして呑気に怒鳴ります。芳彦くんはその隙に何とか守助くんの体重を振り切って起き上がると、そのまま裸足で庭へと飛び出します。守助くんも怒鳴り散らしながら彼を追います。僕は芳彦くんを何とか助けたい思いでしたが、酔っ払い集団の頭にはアルコールが詰まってしまっているようで何の役にも立たないのです。寧ろ楽しそうに庭を馳け廻る二人を眺めているのです。
「芳彦ちゃん逃げろ逃げろー」
「がんばれ〜」
ふざけた口調で他人事のように芳彦くんを応援する彼らを、僕はこういう時、心から軽蔑していました。
守助くんは納屋の壁際まで芳彦くんをついに追い詰めると、みぞおちや顔面にパンチを何度も繰り出します。守助くんは喧嘩は弱いのに対して一方的な暴力は慣れっ子です。守助のグーパンチが芳彦くんの顔面にヒットし、芳彦くんがワァッと泣きだすと縁側で見ていた母も怒鳴ると言うより呆れたようにため息を付いています。昼間から守助くんの面倒に酔っ払いの相手。既にヘトヘトの様子でした。
「でもよぉ。芳彦はムカシっから口だけ達者な割には弱っちいし情けねえんだよなぁ」
父は仲間に芳彦くんを責めるような言い方をしていました。
「だいたい男なら年上だろうが年下だろうが拳で勝負しんねえとなあ?? おーい聞いてっか芳彦!! いつも言ってっだろ?? 男ってのはなァ、泣いたら負けなんだぞ泣いたら!!」
格好つけてそう言って父は周りの仲間に持ち上げられていました。本当にこの人たちは気持ちが悪いなと僕は辟易していました。榊原さんだけが蹲って泣き止まない芳彦くんを心配そうに眺めています。
「ほら、ヨシヒコ。お母さんとこ来なさい。顔見てあげるから」
母が芳彦くんを手招きます。守助くんは何発も芳彦くんを殴りに殴って満足した表情です。
そう。いつもならここで終わるのです。けれど、今日は違いました。それは次の瞬間でした。なんとあの芳彦くんが守助くんに飛びかかったのです。
僕は一瞬何が起こったのか分かりませんでした。守助くんが芳彦くんに追い打ちをかけたのかとさえ思った程です。でも違います。芳彦くんが守助くんに生まれて初めて勝負を仕掛けたのです。
油断していた守助くんは周り以上に気が動転しいたと思います。こんなことなかったのですから当然でしょう。芳彦くんは泣きながらも庭の真ん中で守助くんに掴みかかり、守助くんは必死で抵抗しようとします。すぐに守助くんが芳彦くんを押さえつけて屈服させるかと思いきや、意外と苦戦しているようにも見えました。
縁側でぼやあっとツマミを齧っていた父達もまさかの展開に「おあっ」と声を上げてしまっていました。
守助くんは何度も芳彦くんに馬乗りになろうとして体重をかけようとしますが、芳彦くんも華奢な身体をさっと引いてそれを避けます。何度かぐるぐる二人は転がります。そして芳彦くんが倒れた瞬間に守助くんが彼の横腹を思い切り蹴り上げました。一発、二発...。今度こそ守助くんに軍配があがると思いきや、それを芳彦くんは待っていたかのように彼の太い足に食いついたのです。
両脚を掴まれた守助くんはバランスを崩して仰向けに倒れ込みました。守助くんに隙が生まれます。その間に芳彦くんは彼の両脚を両手で掴んでその場で体制を整えました。
「なんだヨシヒコのやつ。慣れねぇプロレスでもかけんのか?ったくせっかくいい勝負だったのによ」
おじさん達は残念がってはいましたが、僕は芳彦くんが守助くんの両脚をガッチリと脇に固めたところで彼の狙いに気づきます。僕は既に芳彦くんの勝利を確信していました。
この時の守助くんの怯えた顔つきは、僕は今でも忘れずに胸にしまってありますw
「放せ!! 放せよッ!!!」
「いいぞいけ!! 芳彦。死んでも手放すんじゃじゃねぇぞ!!」
富田くんも縁側の観戦席から応援の声を上げました。
「ヤメろ!! まじで芳彦やったら...てめぇどうなるか....!!」
守助くんは地面で身体を捻って動き回りますが、既に自由は効かないようでした。
そして芳彦くんの足が伸び。その足の裏が、守助くんの股間に添えられます。家で守助くんは白シャツと白ブリーフ一枚の姿のため、体育館の時とある意味条件は一緒です。
それは芳彦くんが初めて自分の意思で守助くんに仕掛ける攻撃でした。守助くんは弱点をつかれ、彼の大の苦手の電気あんまが始まったと同時にビクンビクンと身体を跳ね上がらせました。シャツの上からでも彼のおっぱいとお腹がぶるんぶるんと波打つ様子がわかります。
「だーはっはっは!! 見ろや!! モリくんがヨシくんにおちんちん踏み踏みされちゃってるゾ〜」
「こりゃ傑作だな。おーいヨシヒコやい。そのままモリスケ懲らしめたらお駄賃やるからなあ!!」
おじさんたちも初めてみるその光景に胸を踊らせているように見えました。
「や…ッ…め…ろよぉ…ってめえ…」
守助くんは股間の振動に歯を食いしばって耐えながら、芳彦くんを鋭い目つきで威嚇します。しかし電気あんまの勢いは止まりません。
学校で一路くんにやられた時と違って、守助の両手は塞がってはおりませんでしたが、小鉄くんにやられた時と同様に守助くんは両手が自由だとしても起き上がることが難しそうでした。何度片手を地に付いて大きな身体を持ち上げようとしても、股間で小刻みに振動する足に気を取られてしまっているのか、すぐに力尽きて背中が地面に付いてしまいます。普段の運動不足と肉付きのいい上半身との悪条件が重なってしまって、自分の身体なのにまるで自由にコントロールできていないようにも見えました。

いつの間にか大声を出して暴れていた守助くんの抵抗も静まっていき、彼の反応が鈍くなっていきます。
榊原さんが富田くんに「ちょっと見てやってきてや」と頼み、富田くんが庭に降りて二人の方向へと向かいました。富田くんは仰向けの守助くんを覗きむと、悪戯っぽい笑みを浮かべます。
もう何が起きていたかここで説明する必要もないでしょう。

本来であれば泣き止まない芳彦くんを母が抱き締めて慰め、それを見た守助くんが高々に笑うのが我が家の日常でした。
母は他人への迷惑行為には厳しいのですが、守助くんが僕や芳彦くんをまとめて泣かすなんてあまりにも日常的過ぎて毎回相手にしません。僕や芳彦くんがどんなに泣いて守助くんにやられた辛さや悔しさを訴えようとも、母は兄弟喧嘩においては守助くんに表面上でしか注意はしないのです。注意しても守助くんが聞かないことは分かっていますし、兄弟だから仕方がないと思っていたのでしょう。
まして父親からの対応なんて外道中の外道。
「ああン?? なんだぁ?? 男のくせに喧嘩で負けてピーピー泣いてんじゃねぇよ!! 飯抜きにすっぞ」
弱い方が悪い。泣く方が悪い。をモットーの父の前にして泣いた瞬間に僕らは基本父からは貶されて、弱虫、泣き虫とレッテルを貼られます。守助くんは普段の問題行動があり過ぎるため、僕らより叱られる回数こそ多いのですが、例え僕らを泣かせても父の横ではすました顔で食事をしているのです。そして暇さえあれば泣いている僕らを更に冷やかして追い討ちをかけるのです。無論父は「男のくせにみっともねぇな!!」と言って新聞で僕らを邪魔そうに叩いてあしらうだけ。それが我が家の日常でした。今までは。
しかし今守助くんは仰向けで、ブリーフをぐっしょりと濡らした状態で動きません。太い二の腕で顔を隠して、口をへの字に曲げています。僕は富田くんに呼ばれて庭に来ておりましたが、既に泣き止んで薄っすら笑みを浮かべている芳彦くんを見て、自分の予想が正しかったことに気がつきました。
母はやっと腰を上げてサンダルを履くと僕らの方へとやってきます。僕と芳彦くんは立ち上がったまま守助くんを見下ろしていて、富田くんは意地悪なのか本気で心配しているのか「おーい。聞こえてるのか〜」と守助くんの耳元でしゃがんで守助くんに何度も声をかけています。
「もう...バカ。起きなさい...こんな濡らしてー」
母は守助くんを背中から抱きかかえるようにして起こすと(それだけでも苦労していました)背中についた砂を払いました。
もう夜遅かったですが、我が家の電球が庭を明るく照らしていたため、守助くんの真っ黄っ黄のパンツは室内からでも丸わかりだったでしょう。
立ち上がった守助くんを見ておじさんたちはあんぐりと口を大きく開きます。守助くんが電気あんまで漏らしちゃうなんて、案の定誰も想像だにしていなかったようでした。
「おぃおぃ....!! なんだおめぇ!? まさか弟にチンタマ踏まれて漏らしたんじゃねぇだろうなァ!?」
「よっ!! お漏らし大将!! モリモリちゃんええ格好しとるぞ〜。頼むからこっちくんなよぉ」
「ばっかやろぉ。今ヤツを茶化すなよ。あのパンツごと飛びかかってきたらこっちも相当な被害だぞ!?」
だが守助くんはおじさんたちに向かって行くことはありませんでした。右腕で顔を押さえ、嗚咽を漏らしながらとうとうその場で泣き始めてしまったのです。
「おんめぇ...すげぇよ!? ...やったじゃんか!!」
富田くんは素直に歓喜の声を出して、芳彦くんの頭を撫で回します。そして彼の小さな背中を押して父親たちの元へと送るように走らせました。もしかすると兄弟のいない家庭には異常な光景にも見えるかもしれませんが、あの守助くんが芳彦くんにやられるなんて我が家の大事件、芳彦くんの快挙なのです。その時の父親達の喜びようといったら他に例えようがありませんもの。
「芳彦。おめぇいつのまに強くなったんだぁ!!? 父ちゃんうれしいぞ」
「ヨシくんほんますげぇって!! あのモリくん泣かせたんやぞ?! パーッと今から祝うか!!」
「泣かせただけじゃねえぞ。強制失禁だかんなぁ。こりゃ当分あの悪たれも芳彦くんには大きい顔できんくなるぞ〜」
芳彦くんも浮かれつつ、そして若干照れ臭そうにしながらも、父の膝の上で彼らの笑顔に応えていました。
正直僕にとっては、守助くんが神社から家までフリチンで帰らさせられることよりも、体育館でお漏らしさせられることよりも、弟の芳彦くんにどんな形であれ泣かされることの方が大事件でした。ずっと守助くんのイジメに苦しんでいた僕にとっては、まさかこんな日が来るなんて夢にも思ってもいなからです。本当に夢でも見ている気分でした。
「もぉーあんたは恥ずかしいわねぇ…お尻のところまで濡れちゃってるじゃない....あっ、足にも垂れてる!!」
母は泣いている守助くんをあやすように軽く頭を撫で、優しく声を掛けています。本来なら僕か芳彦くんが守助くんに泣かされたときに母が向けてくれる優しい表情なのです。守助くんは自分が叱られた時以外(あるいは富田くん・大人に懲らしめられた時)で母にこうして慰められていることは滅多にありません。(勿論、実際は僕らの居ない時に甘えたりはしていたようですが)
「ごめんなさいねギンさん…そっち後で片付けるから」
「ああ。気にせんでええぞ。わしも酔っちょるからお構いなくしてくんさい。それにこっちはええもん見せてもらったから気分ええわ〜」
守助くんが大のお気に入りの榊原さんは、泣いている守助をつまみにして気分良さそうに酒を飲んでいます。
「もう泣かないの。汚いから下洗いに行くわよ」
母はそう言って守助くんの手を引いてお風呂場に連れて行こうとします。しかしそこで文句を言い出したのは父でした。
「なぁにぃー?! まった風呂場かよ?! 今日風呂場で守助の小便何回流してんだよ!?」
「朝ション、昼ション、夜ション。こりゃすげぇな。新記録じゃねぇか守くん」
他のおじさんたちが泣いている守助くんをからかいます。だが父は笑っていませんでした。
「あんなァ…言っとくがウチの風呂場は便所じゃねぇんだよ。こいつの小便洗った後の風呂場にどぉーして俺たちゃ我慢して入らなきゃいけねえんだ!?」
「うるさいわね。子供なんだからしょうがないでしょ」
「ばっきゃあろお。どこの世界に一日に三回も漏らす中学生がいるんだよ!? トイレにいけねぇならオムツでもさせときゃいいだろ」
「まだ小学生でしょ。ほんと酔っ払いは煩いわね」
いつものように夫婦喧嘩が始まりますが、今回ばかりは僕も芳彦くんも父の意見に珍しくも賛成でした。そりゃ僕と芳彦くんだって守助くんのおしっこを流したあとの風呂場なんて絶対入りたくありませんもの。実際守助くんはプールや銭湯の中で堂々とおしっこをするのを知っていたので、守助くんが入った後には湯船に浸かりたくない時がほとんどでした。
二人は散々言い合いし、そして今回は先に母が折れたようでした。
「今後漏らしたら、庭の水でてめえのケツ洗いな」
父は当然のようにそう言ってタバコをふかします。意見は変えるつもりは全くないようです。
「ほら、小便小僧を家にあげんなっつーの!! オラ、おめぇも…コラ!! そのまま家にあがんなっって言ってんだろ!!」
汚れた足の状態で家に上がろうとしている、守助くんの頭を父がゲンコツを食らわせます。泣き止みかけていた守助くんの瞳にまた涙が浮かぶのがみえました。
「ほんとなっさけねえやっちゃな。芳彦にケンカ自分で売っといて負けてチビって泣いてんのか?? ちんちん付いてんのか?!」
「付いてるけど寝小便とお漏らししかデキマセーン」
守助くんの横で富田くんがそうからかって、おじさんたちがどっと笑いました。
榊原さんだけがコラコラと優しく注意しておりましたが、やっぱり守助くんが富田くんに憤慨している様子を見て楽しそうです。
「…ほら、守助もこっち来なさい」
母はちょうど縁側の真っ正面にある水道の蛇口にホースを付けているところでした。蛇口をひねってホースの先から水が出るのを確認しています。
「おら観念しろおデブちゃん。お漏らしチンポコ洗ってもらってこい」
「ヤダ!! 俺イヤダ!!」
その場を動かない守助くんにしびれを切らし富田くんが彼の肩を掴むと、母の元へと強引に運んでいきます。
守助くんは半べそをかきながら、母の前では駄々っ子のように「いやだあいやだぁ」と土の上で何度も足踏みして抵抗しています。
そりゃそうでしょうに。縁側に座っている大勢の観客はニヤついた顔で守助くんと母を眺めているのですから。
「俺たち見てないから安心していいぞー」
おじさんたちはふざけて目を覆う真似をしています。しっかりと見ているという何よりのアピールのようでした。
「いやダァ!! 絶対いやだ!!」
「洗わないと汚いでしょ!! バカ!! 早く脱ぎなさい!!」
母は暴れる守助くんを無理矢理万歳させてシャツを剥ぎ取ると、彼の汚れたブリーフに手を伸ばします。守助くんは慌てて腰を引いて逃げようとしますが、その丸い体を富田くんが捕まえました。
「豚カツゲット〜」
「放せよ!! ざっけんなっ!!」
「暴れんなおい!! ってかきったね、濡れたケツこっちに引っ付けんなって!!」
二人が言い合いしているその隙に母は守助くんのブリーフを掴んで、足首まで一気に下げます。
小ぶりのおちんちんが僕らの目の前でピョコンと飛び跳ねてその姿を露わにします。富田くんは素っ裸になった守助くんの小ぶりのおちんちん、そして彼の大福尻を見て堪えきれず吹き出していました。
芳彦くんも父の膝の上で大はしゃぎですし、他のおじさんたちもさっきの約束はもう忘れて手を叩いて笑ってしまっています。
「んおれ..いやだよぉ、かあちゃぁん...!!」
守助くんは股間を手で押さえながら何度も何度も甘えた声を出して足踏みしますが、母が強引に守助くんの肩を掴んで近くに寄せます。
「恥ずかしいなら早くなさい!! もぉおちんちん触ったら手も汚くなるでしょうが!! ほら、お尻向けて」
守助くんは若干屈み腰になったまま大きなお尻を母に突き出すようにします。(彼なりに股間を隠しているつもりだったのでしょう)それからたまに顔を上げると僕らを睨み「見てんなよ!!」と怒鳴り口調でそう叫びます。そしてその都度母にその桃尻を叩かれてしまうので、その場からはもう笑いが絶えることはありません。
「にしても守ちゃんのケツホンマでっぷりしてきたなぁ。普段何食わせてんだよ」
「ケツだけじゃねえだろ。あの肥満体見てみろよ。子豚もビックリだぜ」
「あいつぁ昔っから、信二と芳彦の食いモン奪ってきたんだぜ?! 一人だけブクブク太るのも頷けるぜ」
酔っ払いたちは好き放題言って、守助くんがお尻を洗ってもらうのを楽しんで鑑賞しておりました。
「多恵子さーん。そいつのケツの穴も綺麗にしてやっとくれよお」
そんな声があがると一同が大いに笑って、母もはにかんだような笑みを浮かべます。守助くんだけ物凄い形相で睨み返していましたが、格好が格好なので迫力も糞もありません。富田くんは母に指示されて石鹸を持ってくると母の横に置きました。
母は富田くんにお礼を言ってから、石鹸を手であわ立ててもう一度守助くんのお尻を洗い始めます。やっぱり水だけでは不十分だったのでしょう。
「ほら、前も!! 手邪魔って!!」
「い...いやだよぉ...なんでぇ....」
「守助!!」
あの守助くんでも母の命令には逆らえないようで、観念したように股間から手を放しました。ツボミのような小さく縮こまった守助くんのおちんちんが丸出しになります。
富田くんは母の背中側に移動すると「ちっさァ」と口だけ動かして守助くんにだけ見えるようにして嘲笑の笑みを浮かべました。
守助くんの顔が赤くなるのが僕の位置からでもはっきりと分かりました。母は石鹸のついた手で守助くんのそのツボミの先を摘んで丁寧に洗い始めました。
今日一番の笑いが縁側の方から響いてきたのは言うまでもありません。僕の位置からでも守助くんの表情がくしゃくしゃにしていく様がはっきりと分かりました。
「おめぇママにチンポコ洗われながら泣いてんじゃねえよw」
富田くんのその一言で守助が「ぐぅ…うぐぅ...」と低く唸るようにして泣き声をあげました。母はまたしても大きなため息を吐きます。
「もぉー。あんたも悪いんでしょ?! お尻見られて恥ずかしいならちゃんと痩せる努力なさい!!」
母が守助くんの大きなオケツをピシャリと叩くと守助くんの泣き声が大きくなりました。

その後の記憶は少し曖昧ですが、母は芳彦くんに守助くんにきちんと謝るように指示しました。
芳彦くんは、体を拭かせてもらいパンツまでみんなの前で履かせてもらった守助くんに近づくと「ごめんなさい」と素直に頭を下げました。
守助くんにとってそれはどれだけの屈辱だったか分かりません。芳彦くんを何発も殴った後とは言え、電気あんまでお漏らしをさせられて泣かせた挙げ句、おちんちんとお尻の掃除をみんなの前でやらされてしまった訳ですから。それも全部あの芳彦くんのせいで。
それに母に言われて謝られるというのは、自分より弱い立場にされるほど屈辱的なのです。
榊原さんに宥められながら、膝の上で拳をぎゅっと握りしめて涙を堪える守助くんの丸い背中は見ていて哀れな気持ちにしかなりませんでした。
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